映画 神々と男たち
2012年4月20日
昨年、絆という言葉のうちに人と人とのつながりの大切さを再認識したが、この映画も絆をテーマの1つとしたものだ。
宗教を超えた絆、かつての支配国民と被支配国民という関係を超えた絆を、この映画は描いている。
「神々と男たち」は、2010年に、実話を基に制作・公開されたフランス映画。
時代は1990年代、アルジェリアのある寒村のトラピスト修道院のフランス人修道士達の物語。
トラピスト修道会といえば、日本ではクッキーやバターでお馴染みだが、厳しい労働と祈りのうちに質素な修道生活を送っていることで知られている
映画の主人公となったアルジェリアの修道士達も畑を耕し、村人たちを医療で助け、静かな祈りの生活を送っていた。
いうまでもなくアルジェリアはイスラムの国、村人たちはイスラム教徒だ。しかも、アルジェリアはかってフランスに支配され、武力で独立を勝ち取っている。
しかし、修道院には、毎日、治療を受けるため大勢の村人達が詰めかけ、修道士達に信頼を寄せていた。修道士たちも、同じ神の民として村人に接し、村人たちを信頼していた。
今日、キリスト教とイスラム教は対立的な関係にあると理解されがちだが、歴史的には平和に共存してきた時代の方が長い。かつてのパレスチナも、こんなだったのではないかと思う。
さて、ある日、アルジェリア政府に反対する武装グループが村に押し入り、修道院を襲おうとする。同じ時期に彼らは外国人労働者を殺害しており、修道士たちは動揺する。さらにアルジェリア国軍が、修道院が反政府派に加担しているのではないかと疑い、圧力をかける。ある修道士は死ぬために修道士になったのではないといいフランスに帰国することを主張し、またある修道士は残って勤めを果たすべきだと主張する。修道士たちは、何回も話し合い、祈り、最終的に、神が求めることとして村に残り村人と共にあることを決意する。
映画は、修道士達の日常を淡々と描写しながら、彼らの決意を静かに伝えている。
結局、修道院は襲われ7名の修道士達が拉致され殺害される。2名の修道士が隠れて助かり、現在もフランスで存命。
拉致、殺害の首謀者は、反政府派ともアルジェリア国軍ともいわれ、真相は未だに不明だ。
ともあれ、命の危険を冒した修道士たちの決意はまさに彼らの信仰を証したものに他ならず、このことに深い感動を覚えるとともに私たちの「絆」の内実を問われたような気がした。(GON)