カトリック北仙台教会

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フィリッピンの困窮邦人

2012年1月15日

年末年始にかけて、2冊の本を読んだ。
震災以降、日々の現実に圧倒されて本など読む気がしなかった。気分が落ち込んでいたわけではないが、以前とは違った日常生活だったように思う。地震でグチャグチャになったコレクションを直す気はしなかったし、毎日の習慣のようだった携帯ゲームも止めてしまった。
しかし、10月頃から気分が段々変って、本屋にも足が向くようになった。
さて、年末年始に読んだ2冊のうちの1冊は、「日本を捨てた男たち」。(水谷竹秀著、集英社刊)著者は、マニラの邦字紙の記者の著作だが、フィリッピンでホームレスの生活を送る日本人のドキュメント。困窮邦人の存在はフィリッピンの社会問題ともなるほど数が増えているらしい。
ほとんどが、日本での生活に行き詰まりフィリッピンパブで知り合った女性を頼りに渡航、やがて所持金を使い果たし女性に捨てられて行き場を失った男達だ。
彼らは、現地の人々の善意によって支えられ、かろうじて命をつないでいる。
昼は小商いのおばさんの手伝い夜は教会の椅子にもたれて過ごす男、ふとしたことで知り合った家族の家に居候している男、病気になってカトリック系の施設で暮らしている男、様々だ。
この著者は、善意から日本の家族に連絡を取ったり、帰国の際会いに行ったりして帰国費用の送金を依頼しているが、例外なく断られている。
このフィリッピンの困窮邦人の存在から浮かび上がるのは、家族や社会から断絶される個人を生み出す豊かな日本の社会と、見ず知らずの外国人をたすけようとするフィリッピンの貧しい社会の対比だ。
震災後、人と人との関係に新しい価値観が生み出されつつあるが、この価値観が社会全体を支配するよう祈らずにはいられない。(GON)

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